男前攻め

雛鳥は汐風にまどろむ/南月ゆう(ネタバレ・感想)真の人間愛を描いた感動作!

ライラ
ライラ
こんにちは、BL歴25年のライラです
BL沼にハマり、今まで累計5,000冊のBLを読みました!

南月ゆう「雛鳥は汐風にまどろむ」のネタバレ込みの感想をご紹介します。

このBLをおすすめできる人

ストーリー重視な人
心理描写重視な人
焦れったい恋の話を読みたい人
切なめの拗らせ愛にときめきたい人
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当記事はネタバレ込みの内容になっているので、ご注意ください!

 

雛鳥は汐風にまどろむ『カップリング』

惣菜屋さん × 会社員

ライラ
ライラ
大人の感動を生むアダルトストーリーです

 

雛鳥は汐風にまどろむ『BLジャンル』

ヤンデレ攻め
男前攻め
ノンケ受け
子育て
シリアス
過去に訳あり
泣ける

ライラ
ライラ
全体的にシリアスで少し重い雰囲気のお話です!
でも最後はめちゃくちゃ感動します!

 

雛鳥は汐風にまどろむ【あらすじネタバレ】まとめ

主人公・立花勇一は、海なし県から海沿いの田舎町へ引っ越しをした。
この日から心機一転、小学生の歩との二人暮らしがスタートする。

荷解が終わらないまま、昼食を求めて近所を徘徊。
ふわりと香ってくる美味しそうな匂いにつられて、紅屋という総菜屋さんのドアを開いた。

店主・紅林陵は明るくて人当たりが良くて、一見ホストに見えるくらいイケメン。

陵とお客さんが話している内容もホストクラブのような雰囲気が漂っていたが、試食させてもらった総菜はどれもものすごく好みで美味しかった。

いくつかの総菜を注文しながら、今日引っ越してきたばかりだと伝えたら、「常連候補ってことで」と大量におまけを付けてくれた。

その上、近所を案内してくれるとまで。
勇一は申し訳なくて断ろうとしたら、突然の壁ドン。
「実は下心あるって言ったら?」と、陵の顔が少しずつ近づいてきて、勇一はドキドキ!

 

翌日、歩も連れて商店街をメインに陵は街中を案内してくれた。
結局陵の言う『下心』というのは「店の食材の買い出しを手伝って欲しい」というだけのことだった。

一緒にいればいるほど、陵の顔の広さや、容姿もスタイルの良さなんかに劣等感をちくちくされた。

あんまり隣を歩きたくないな、と切なく思っていると、最後に案内されたのは、砂浜。

 

歩が嬉しそうに波打ち際へとかけだしていく。
歩の笑顔を見るのは、とても久しぶりだった。

歩の母親は一年前に交通事故で亡くなった。
歩の父親も、その他の親戚達もみんな歩の引き取りを拒否。
そこで、歩の母親の弟にあたる勇一が引き取ることを決意。

 

愛する家族を失って傷ついている歩を、癒やしてやりたかった。
しかし歩はこの一年、泣きもしないし笑いもしなかった。

勇一は親にもなりきれず、ただ一緒にいてやることしか出来ない自分が情けなくてたまらなかった。

 

その不安をほんの少しだけ吐露したところ、陵は『お宝』と言って砂浜で拾った青くてキレイなものを勇一にくれた。

それはシーグラスといって、元々はただの割れたガラス。
何年も海の波に揉まれて少しずつ角が削れて丸くなったもの、らしい。

勇一はその日の夜、寝る前にシーグラスをライトにかざして眺めた。

キレイなのはもちろんだけれど、ただのガラスの欠片がこんな風に丸くなるまでにどれだけ海を旅していたのか、ロマンを感じる。

 

その姿を見ていた歩は、翌日からこっそり浜辺に通い詰めてシーグラスを集め始める。

浜辺には偶然、陵が居合わせた。
陵は、歩を前にして『営業スマイル』を取っ払う。

陵には、親がいなくて周囲から「かわいそう」と言われる歩が、過去の自分にダブって見えていた。

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雛鳥は汐風にまどろむを読んだ感想

最初に白状しますが、このあらすじや感想でこの漫画の魅力を書き切れる気がしません!

キャラクター性、ストーリー性、家族愛、孤独を抱えた切なさなどなど、いろんな要素がとても絶妙に混じり合って絡み合ってすばらしいんです!!

 

まずこの漫画は、勇一の立場と環境と人となりが描かれています。
勇一の姉であり歩の母親は交通事故で亡くなっているんですけど、同時に勇一の両親も亡くなっています。

親戚一同は歩の引き取りを拒否していますし、勇一はひとりで頑張るしかないんです。

勇一は職場に迷惑をかけたくないと思って頑張るけれど、それでもやっぱりどうにもならないこともあって苦しんで、歩のためには結婚でもして環境を整えるべきなのかと悩みます。

勇一のそういう気持ちを聞いた陵は、嫌な笑みを浮かべます。

勇一の言葉を陵は「勇一の本音は、なんで俺だけガマンしなきゃいけないんだ?ってところにあるんじゃないの?」と、辛辣な表現に言い換えるんです。

 

勇一の胸には、本音と建前、理想と現実、いろいろな思いが交錯しますが、歩の傍にいてやりたいという気持ちだけは揺るぎないものでした。

歩と向き合うことから逃げる気はない、けれど、逃げ出したくなるときがまったくないわけではない、というのが誰にも言えない本心でした。

そこで陵から「逃げ切れないなら、俺が付き合ってやろうか」と言われ、キスされて、勇一はそれに縋ってしまいます。

 

「歩のために」という気持ちと、「自分がやりたいこと」の狭間で揺れる勇一の姿がとてもリアルで人間臭くて、めちゃくちゃ感情移入してしまいました。

ライラ
ライラ
読んでいて苦しくなる場面もたくさん登場します

 

だから勇一の悩みや歩との関係が、陵の助けもあって丸く収まったところは本当にホッとしました!

だけどそこで、今度は陵の問題が露呈するんです。
陵は子どもの頃から、病弱な母といつか暮らす事を夢見ながら、親戚の家で冷遇されて育っていました。

このあたりは読んでいて嫌悪感しか出てきませんでした。

陵の恋愛観はかなり歪んでいるんですが、そういう人格が形成されてしまったのも無理がない、と思えるほど辛い過去です。

 

陵の過去が紐解かれていくのにつれて、陵が被っている「明るくて人当たりが良い」仮面がはがれ落ちていきます。

陵は昔から何をしても夢中になれなかったし、常に虚無感が付きまとっていたようです。
だけど自分がずっと欲しかったものの片鱗を、勇一に感じます。

 

陵がずっとほしかったものは『シーグラス』にまつわる思い出の中にあって、勇一と歩の関係性の中にあって、決して自分の手には入らないものなのだ、という結論に至るんです。

その結果、陵は衝撃の決断を下します。
怒濤のクライマックスに涙がぽろぽろすること間違いなしです!!

 

BL漫画において子育てものって、結構複雑な存在だと思います。

でも「雛鳥は汐風にまどろむ」は、子ども・歩の存在によって勇一の人となりがとてもよくわかります。

そして何より、陵の姿を投影している存在でもあるんです!

 

子どもをきっかけに仲良くなる、とか子どもがアシストすることで2人がくっつくとか、そんなペラッペラな話じゃないんです。

歩がいなかったらこのカップルは絶対に、絶対に成立し得ないんです!

勇一も陵も歩も、家族を失った経験があり悲しみを抱えています。
それぞれに苦しんでいて、孤独でした。

だけどみんなが、それぞれの形の“愛”を手に入れる、心あたたまる内容です。

電子版では数年後のほっこりするシーンまで描かれていて、最後にきゅんとさせられます。

作者・南月ゆうさんの作品を読んだことがない方はぜひ手にとってみてください。

ライラ
ライラ
こんな素晴らしい世界観の漫画を描かれている人がいたのかと、きっと感動するはずです!
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